戦没画学生「祈りの絵」展に行ってきた

胸に迫る展覧会だった。

絵の道を志しながら、学徒動員で戦争に赴き、そのまま帰らなかった方々の遺作を集めた展覧会である。
いや、果たして展覧会なのか?
会場にはところ狭しと、大小さまざまな絵が飾られていた。サイズも、画風も、モチーフも実に様々、日本画も洋画も鉛筆画も区別なく展示されていた。
そしてそれぞれの絵には、作者の名前と略歴、残されたご家族が語る作者の思い出が付記され、一部にはそれ以外の遺品(写真や手紙など)も飾られていた。

その展示は、飾られていないもの、そこにないものを見るための手がかりであった。
絵を観つつ、略歴を読み、思い出を読む。その時、そこに立ち現れるのは、絵筆を振るう作者そのものであった。
確かにそこに存在したと感じられる、その方々の姿が、深く胸に迫ったのだった。

浮かび上がる作者たちは皆、豊かな教養と深い愛情を感じさせる方ばかりであった。
戦前戦中の時代、当時を知らない我々は、ついその時代に文化などなかったかのように思ってしまう。しかし、そんな暗い時代であっても、そこに生きた方々はそれぞれに高い文化を胸に宿していた。
我々は戦地に立つ兵隊一人一人にそれぞれの豊かな人生がある事をつい見落としてしまう。しかし彼らは高い教養と豊かで深い愛情を持った方々であった。
会場に飾られた豊かな絵画の数々が、その事を雄弁に物語っていた。

気が付けば会場のそこかしこに、目尻を押さえ涙をこらえる姿があった。
誰もが、そこにある絵を見ながら、そこにいない人々に想いを馳せているのだった。

そこにないものを、人を感じていた我々は、果たして展覧会を見たのだろうか?
確かな事は香り高い文化に触れた、豊かな時間を過ごしたという事だけだ。そしてそれで充分だ。
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by w-edge-t | 2011-06-12 21:44 | 日々の暮らしで考えた


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高山なおき プロフィール

ダブルエッジ 作家
1969年7月6日生まれ

主な作品
○映画
「娘道成寺~蛇炎の恋~」(高山由紀子と共同)

○演劇
「ダブルエッジの忠臣蔵!」
「輪廻くん」
「天気待ち~waiting for the sun~」(奈良橋陽子と共同)  他

○ラジオドラマシナリオ
NHK-FM「魔法の王国売ります!」他

○テレビドラマシナリオ
NHK「ゴーストフレンズ」 他

○ゲームシナリオ
東芝EMI「ずっといっしょ」

○小説
ZEST「ずっといっしょ~秘密の星空~」

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