稽古場は燃えているか?

室温ネタではないのでご心配なく。

9月の声を聞いて1週間以上が過ぎた。
いよいよ「輪廻くん」も本番が近付き、稽古も最後の詰めとばかり熱が入る。
とりわけ、演出のノゾエ征爾氏と主演の高橋一生氏は連日熱くぶつかり合っている。
(写真は動きをやってみせて説明するノゾエ氏とそれを見つめる高橋氏)
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誤解して欲しくないが、ぶつかり合うというのは決してケンカだとかそういう意味ではない。
芝居の現場っちゃあそういうもんなのである。

例えば映画やドラマの撮影現場というのはほとんどぶつかり合いは起きない。
タイトな撮影日数の中で、一つの作品を形作るカットを全て撮影するには、いちいちぶつかりあっていたら間に合わないと言う物理的な事情もある。
しかし根本的な理由は要するに監督が独裁的に支配する現場だからである。
今撮影しているカットが作品全体に対してどういう意味を持つのか、その正確なところを理解しているのは監督しかいない。だから監督に全ての判断を任せる以外仕方がないのである。
従ってぶつかりあいは時間の無駄であって極力排除されるべき事柄になる。
映画でぶつかりあいがあるとすればそれは編集現場であろう。
すでに撮影されたカットのうち、どれを使い、どれを棄てるか。どういう順番で並べるか。撮影済みのフィルムという現物がある場で、初めて意見を交わす事が可能になる。

ところが芝居は事情が異なる。
本番で観客の前に並べられる要素が稽古初日からあらかじめ揃っている。
つまり役者の事である。
映画はフィルムでできているのに対して、芝居は役者でできているのである。
役者は、完成形を想定して、本番でどう動けばいいか、どう喋ればいいかを稽古で身に付けていく。
一人の役者は自分の演じる役について、責任を持ってその振る舞いを考え、身につけて、実行する。
演出家の仕事はその交通整理である。
芝居全体に対して、一人一人の役者がどのように振る舞うと効果的か、他の役とのバランスを取りながらアドバイスする。

独裁者と交通整理。

映画の監督と芝居の演出家はこんなに違うのである。
そしてだからこそ、芝居の稽古現場では熱いぶつかりあいが起こるのである。

今ノゾエ氏と高橋氏は連日熱くぶつかりあっている。
その原因は何かと言えば、根本のところは本人たちにしかわからない事だろうけれど、こちらから見ていて感じるのは、「アクセルの吹かし方」について、ではないかと思っている。
高橋氏にはラストに向けて、思いっきりアクセルを吹かして欲しい。そのためには、どこで、どのように吹かしたら効果的か?
タイミングを間違えれば吹き上がりきらずに終わってしまうかもしれない。
方向性を間違えれば自己満足で終わってしまうかもしれない。
或いは他に気になる事が残ったまま吹かしても、うまく吹き上がらないかもしれない。
……そんな調整を、実際にやる側の感覚と、観ている側の感覚を調整しながら探っているのだろうと思う。

それにしても二人ともあきらめずに粘る!稽古時間を伸ばして取り組んでみたり、さらに別の視点からの意見を求めてスタッフを増員してみたり、様々な手を尽くしながら、根をあげずに正面からぶつかり続けている。

さてその結果はどう出るのか?
どんなものが本番で出来上がるのか?
ここまで来ると、俺も観客の皆さんと同じ感覚で、ただ楽しみに待つばかりである。
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by w-edge-t | 2011-09-09 11:51 | 芝居の現場で考えた


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高山なおき プロフィール

ダブルエッジ 作家
1969年7月6日生まれ

主な作品
○映画
「娘道成寺~蛇炎の恋~」(高山由紀子と共同)

○演劇
「ダブルエッジの忠臣蔵!」
「輪廻くん」
「天気待ち~waiting for the sun~」(奈良橋陽子と共同)  他

○ラジオドラマシナリオ
NHK-FM「魔法の王国売ります!」他

○テレビドラマシナリオ
NHK「ゴーストフレンズ」 他

○ゲームシナリオ
東芝EMI「ずっといっしょ」

○小説
ZEST「ずっといっしょ~秘密の星空~」

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