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長門裕之さんの死に想う

5月21日、俳優の長門裕之さんが亡くなられた。

先日まで、僕らはあるお芝居をやっていた。
「輪廻くん」と言うタイトルで、ちょっと変則的な公演だった。
同じ台本で月1回、役者を変えながら1年間続けるという形態だったのだ。
始まったのが2010年4月で、最後が今年の5月15日。
やってる間に面白がってくれる人ができて、その縁で今度は9月に再演する事になったりして、俺の中でもかなり大事な作品の一本である。

その、物語の発想の元になったのが、他ならぬ長門裕之さんであった。
2年前、ちょうど「毎月1回1年のロングラン公演をやってみないか」と声をかけられ、1年やるとしたらどんなテーマがいいだろうと考えていたときの事だった。
当時、長門さんの書かれた「待ってくれ、洋子」が話題になっていたので、読んでみたのだ。そこには長門さん夫妻の老老介護の赤裸々な実態が書かれていた。

正直、本の全てに賛成できるかと問われれば難しい。話はそう簡単ではない。根本的な問題として、認知症を患い本人承諾の取れなくなった妻(それも女優だ)を、勝手に人前に晒して商売のタネにする行為自体が、簡単によしとできる事ではなかろうと思う。
じゃあ全てを汚い売名行為と切って捨ててよいかと言えばそれもまた違うとも思う。夫婦と言う関係は他人が簡単に断罪出来るほど単純じゃない。

当時、自著についての取材の流れでTVに映った長門さんは、「今の俺たちはただその時を待っているんだ」と言っていた。
「その時」とはつまり、南田洋子さんが天に召される時の事だ。
決して「その時」が来て欲しい訳ではない。だが一方で、ずっと来ないとしたら、それもまた地獄である。だから「その時」を待っている。待っているけれども今日であって欲しくはない。まだ自分には彼女の世話をする余力がある。あと一日、後だったらいいな。あと一日、あと一日……。
そうやって日々を過ごしているのだ、と。
記憶を頼りに書いているので言葉遣いは違うだろうけれど、おおよそそのような意味の事を仰っていた。

老老介護について、いやもっと遡ってそもそも夫婦と言うもののあり方について、いやさらにさらに遡るならそもそも人の生命についての、とても複雑な、一筋縄でいかない境地の表明であったと思う。
生きる事、長生きする事が素晴らしいなんて思えない程、辛く苦しい事柄と対面しつつ、それでもあなたのために、今日一日は頑張れた。また明日も頑張ろう。そんな決意表明。それは俺自身の祖父祖母の思い出とも繋がって深く心を揺さぶり、その感慨を起点にして「輪廻くん」という芝居が産まれたのであった。

そして今、節目の時に、今度はその長門さん本人が永眠された。
無論、縁もゆかりもない俺と言う人間が、ただ一方的にイメージを広げて芝居を作ったというだけの事柄であって、タイミングが符合したから何だという話ではない。
ただきっかけを与えてくれた事に感謝するばかりである。

ご冥福をお祈り致します。
# by w-edge-t | 2011-05-22 22:09 | 日々の暮らしで考えた

何はともあれ過去の公演リストなど

1997年
 才能の巣(旗揚げ前 田辺、高山の初コンビ作品)
1998年
 迷宮の女王(旗揚げ公演)
 エクストリームマンショウ!
1999年
 俺ノ世界
 HAPPY DAY DREAM
2000年
 今はまだ檻の中
 タイムコマンダー3
2001年
 幻想法廷
 TVキングダム
2002年
 言ってはならない2、3のことがら
 Save Myself
2003年
 世界を統べる3兄弟
 乙姫エフェクト
2004年
 渡辺刑事 さめた珈琲をすする
 ダブルエッジの忠臣蔵!
2005年
 渡辺刑事 壊れた時計を見つめる
 渡辺刑事 知らぬ間にふられる(石原美か子氏との共作)
2006年
 Am I going ahead?(シリーズ全5公演)
 錆びたSinging Doll〜記憶のロンド〜(浪漫ちいすとリッパーバンドとの共同公演)
2007年
 ホーム・スウィート・ホーム(Double-Edge Live! Vol.1)
 俺様`S BOOT CAMP(Double-Edge Live! Vol.2)
 MAHOU 2.0(Double-Edge Live! Vol.3)
2008年
 世界の果てより端っこで……
2009年
 夫と妻とスーパースター
2010年〜2011年
 輪廻くん(月1公演 全11回)

※新作のみ、再演は含まず
# by w-edge-t | 2011-05-20 16:17 | データ的なもの

ブログでもやろうと考えた

世界最小の劇団であるところの我が「ダブルエッジ」はどれぐらい最小かというとメンバー二人である。
これ以上少なくすると個人になってしまうので、「劇団」を名乗るグループとしては最小だろうと思うのである。
ま、正確には「演劇ユニット ダブルエッジ」と名乗っている。

メンバーは役者の「田辺 日太」と作家の「高山 なおき(こっちがオレだが)」の二人だけ。
無論、舞台に上がるのは田辺だけである。

んじゃ、毎回一人芝居やってんのかというとそんな事はなくて、毎回ゲストの役者さんを呼んで芝居を打っている。つっても二人芝居が主だったりするので公演規模は大きくない。
大きくないので客は少ないし儲からないが、経費も少ないので意外と赤字にならない。
人数が少ないのであまりケンカにならないし、たまにケンカになってもこじれない。
そんなこんなで長続きしちゃって今年で旗揚げ13年である。

以前は劇団のサイトもあったんだけど、ある時パソコンがぶっ壊れて、それで記憶させてあったパスワードがわからなくなってそのまま放置してたら消えてなくなっちゃって後の祭りでピーヒャララ。
てな事があって以来(多分5〜6年前)、ネット上には何の足跡も残してないのでもうそれはそれは知る人ぞ知る劇団である。
秘密結社とかではないのでできれば人に知られたいのだけれど、何たって慢性的にマンパワーが不足しているので、芝居打つ事以外に振り向けられる力が圧倒的に足りない。

と言う訳で、やれる事からやってやろうじゃないかと、ブログを始める事にした。
週一ぐらいでは何か書くよ、多分。
# by w-edge-t | 2011-05-18 16:19 | このブログは……


世界最小の劇団ダブルエッジの作家の方のブログ


by w-edge-t

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高山なおき プロフィール

ダブルエッジ 作家
1969年7月6日生まれ

主な作品
○映画
「娘道成寺~蛇炎の恋~」(高山由紀子と共同)

○演劇
「ダブルエッジの忠臣蔵!」
「輪廻くん」
「天気待ち~waiting for the sun~」(奈良橋陽子と共同)  他

○ラジオドラマシナリオ
NHK-FM「魔法の王国売ります!」他

○テレビドラマシナリオ
NHK「ゴーストフレンズ」 他

○ゲームシナリオ
東芝EMI「ずっといっしょ」

○小説
ZEST「ずっといっしょ~秘密の星空~」

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